2008年09月17日

ゆ:Your Mansion Master is Always Right

Your Mansion Master is Always Right

(意味)
 私が住んでいるマンションの大家さんは、とても面倒見が良い。
 『大家といえば親も同然、店子といえば子も同然』と昔の人は言っていたそうだが、システマティックに物事を運ぶことが多くなった現代において、ウチの大家さんほど入居者のことを考えてくれる人も珍しいのではないだろうか。だから私たち入居者も大家さんを信頼して、小さなことから大きなことまで気軽に大家さんに相談できるし、また大家さんもその信頼に応えて、私たちが持ち込む問題事をなんでもテキパキと解決してくれるのだ。
 大家さんは既に100歳を超えているという噂も聞いたことがあるのだが、まったく年齢を感じさせない、本当に頼れるありがたい存在なのだ。



「おや、A子さん。どうしました?」
「あの……。大家さん、少し相談があるんですけど……」
「はいはい」
「どうも最近、怪しい人に後をつけられている気がするんです。もしかしたら、ストーカーなんじゃないかと思うんですが……」
「うーん。それは由々しき問題ですね」
「私、怖くて怖くて……」
「……そうですね。A子さんが本当は宇宙人だと知ったら、そのストーカーもA子に付きまとわなくなるんじゃないですかね」
「え? 宇宙人……」
「ちょっと、A子さんの顔に細工しまして、ちょちょいの、ちょい、と」
「あの? 何を?」
「いいから、いいから。私に任せておいてください」

*****

「おや、B子さん。どうしました?」
「大家さん、すみません! 今月の家賃、少しだけ待っていただけないでしょうか」
「なにか事情でも?」
「実は先日、両親がそろって身体を壊して入院してしまいまして、仕送りが遅れているんです。来週になればバイト代が入るんで、それまで待ってもらえないでしょうか」
「ふむ、それは大変ですね……。そうだ、それなら今晩、私のところでアルバイトをしませんか?」
「アルバイト?」
「最近、不審者がこの辺りをうろついているという話もありましてね。B子さんに見回りをしてもらえると助かるのですが」
「でもそんな、不審者なんて、私だって怖いですよ!」
「その点は安心してください。この『番犬の首輪』さえあれば問題はありません。はい、ちょっと首を出してください」
「嫌だ、首輪なんて……。あ……、あぐぅ……」
「大丈夫ですよ。それを着けてさえいれば、並みの人間ではB子さんに太刀打ちできませんから」

*****

「おや、C子さん。浮かない顔をして、どうしました?」
「あ、大家さん」
「まるで好きな人に気持ちを伝えられなくて困っている女の子みたいですよ」
「え! どうしてご存知なんですか?」
「そこの、角のコンビニでアルバイトをしている大学生、でしょうか?」
「……そんなことまで……」
「亀の甲より歳の甲。私くらいの爺になれば、そのくらいのことはわかりますよ」
「私、今まで恋愛経験なんてほとんど無くて、ただ一日に一回、コンビニで顔を合わせるだけの彼に、なんて声をかければいいのかわからなくて……」
「なるほど。でもC子さん。私の見るところ、脈はあるような気がしますよ」
「本当、ですか?」
「ええ。思い切って声をかけてみてはいかがですか」
「でもやっぱり私、自信ないです……」
「そうですか……。そうだ、彼に会うときに、この服を着ていって御覧なさい」
「あの、これって……」
「いいからいいから。これを着ていれば大丈夫。もしかしたら彼の方から声をかけてくれるかもしれませんよ」



そして、翌日。

「大家さん、あの、ストーカーの件なんでけど」
「おや、A子さん。どうですか、その後は?」
「私のこの顔を見たら、腰を抜かして、そのまま無言でどこかに行ってしまったようです」
「そうですか。おそらくもう大丈夫だとは思いますが、念のために、もうしばらくはその顔のままで様子をみた方がいいですよ」
「ありがとうございます。そうします」

*****

「ワン! ワン!」
「おや、B子さん。また不審者を捕まえてくれたんですか」
「ワンワン! ワンワン!」
「これはバイト料もアップしないといけませんね」
「ワン! ワン! ワン!」
「おお、よしよし。いい子、いい子」
「クーン、クーン」

*****

「おや、C子さん。そちらの方は、もしかして……」
「はい、あの、昨日お話しした彼です。昨日は私、勇気が出なくてコンビニの中にすら入れなかったんですけど、入口付近をウロウロしていた私を彼が見つけて、レジに並んでいるお客さんを放ってまで出てきてくれたんですよ。それで、是非付き合って欲しいって」
「そうですか。それは良かった」
「彼、実は全身タイツフェチだったみたいで、大家さんから貸していただいた衣装が役に立ちました。本当にありがとうございました」
「どういたしまして。あなた、C子さんのこと、大切にしてあげてくださいよ」



 ウチのマンションの大家さんは、私たちをからかって楽しんでいるんじゃないかというくらい、いつも無茶なことばかり言う。だが、それでもなんでも、大家さんの言う通りにすれば、大概のことはうまく運ぶのだ。まるで神様のように先のことをすべて見通しているような、あるいは、大家さんこそが裏で全てを支配しているかのような気さえしてくる。
 とにかく大家さんは、いつも正しいのだ。

 転じて、目上の人の言うことは聞いておきましょうね、という意味。




39-yu.jpg






posted by 三月うなぎ at 03:49| Comment(6) | TrackBack(0) | かるた | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大家さんも特殊メイクか何かだったりするのでしょうか。
Posted by あらきん at 2008年09月18日 00:17
頼もしいですねえ大家さん。
それぞれの皆さんの日常に思いを馳せて、いろいろと良からぬ妄想をしてしまいました(特にB子さん)。
しかし「縦長の瞳になるカラコンを付けている絵」なんてはじめて見たかもw
おみそれしました。
Posted by greenback at 2008年09月19日 12:52
顔を細工したはずなのに腕までなってるということは特殊メイクみたいなものではなくて魔法的なものですかね?
Posted by ゆうき at 2008年09月19日 23:28
B子さんがドギー・クルー・・
いや、何でもない。
Posted by 七誌 at 2008年09月20日 00:59
3人とも、ツボです。
A子さんは、腕をさらに凝って欲しいかな。
B子さんは、心まで犬ですね。
C子さん、衣装着るの、恥ずかしくなかったのかな?
Posted by じゃいあん at 2008年09月20日 09:52
みなさま、コメントありがとうございます。

to あらきんさん

大家さんは素顔ですよ。


to greenbackさん

あ、細かいところまで見て頂きありがとうございます。


to ゆうきさん

特殊メイクです。顔の後で腕などにもメイクしたということで、ひとつ。


to 七誌さん

ゲフンゲフン。


to じゃいあんさん

>A子さん
実は手が三本指になっていたりするのですが、フチで隠れてわかりにくくなってしまいました。

>C子さん
「Your Mansion Master is Always Right」、ですので。
Posted by 三月うなぎ at 2008年09月20日 14:25
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