2009年07月25日

トロンプ・ルイユ

七月某日 雨のち曇り

今日は朝から昼過ぎくらいまで断続的に雨が降り、
湿度は高かったが、この時期にしては涼しかった。

放課後、僕は原沢博子の後を追って図書室へ行った。
ページを繰る、袖口から伸びる彼女の腕はとても生白い。
筋肉もあるのかないのか。
抱きしめただけでへし折れてしまいそうだ。
そんな博子のか細いたたずまいが、却って、
僕の胃の辺りで蠢いているマゾヒスティックな心を刺激する。
僕は博子の後ろの席に座り、ブラの紐が薄く透けた背中を
見つめながら、じっと妄想にふけった。

やがて博子は何冊かの本の貸し出し手続きを済ませると
図書室を後にする。
僕も博子を追って図書室を出ると、
階段を降り、渡り廊下から玄関へと抜け、
細い砂利道を通って校舎の裏にある駐輪場へと向かう。
僕が校舎の角を曲がると、丁度自転車に乗った
博子と鉢合わせをし、驚いた僕はその場に倒れこむ。
大きな水溜りのおかげで、僕の着ていた制服は泥だらけになる。
博子はさほど悪びれもしない様子で僕をじろりと睨むが、
ぼそぼそと小さな声で詫びを言うと、
着替えを用意するからついてくるようにと促してくる。
僕は一度はその申し出を遠慮するが、博子との交流を望む
下心もあり、博子の申し出を受けることにする。
博子が向かったのは、彼女が所属している文芸部の部室だ。
部室には僕たち二人以外には誰もいない。
文化祭などの前でもなければ、普段部員たちは来ないのだという。
「服を脱いで」
突然の博子の言葉に僕は戸惑う。
服を脱ぐ前に着替えを貸して欲しい。それが順番だろう。
僕のその主張には、どうやら得心してくれたようだ。
博子は少し待つよう告げ、腰に手をかけてホックを外して
ファスナーも下ろし、自分の穿いているスカートを脱ぐ。
次いで、胸元のリボンを解いて、シャツのボタンも外していく。
その動きは僕の視線など無いかのように淡々としている。
下着姿になった博子はさらにブラに手をかけながら、
僕にその女子用の制服を着るように促す。
脱ぎたてのスカートを手に取ると、そこには博子のぬくもりが残っている。
手に触れた裏地の感触を自分の太ももの感触へと敷衍して、
スカートを穿いた自分を想像する。
博子は下着まで全て脱ぎ去り全裸となり、じっと僕を見つめる。
「服を脱いで」
再度の脱衣勧告は、僕に下着まで身に着けろということなのだろうか。
「似合うわよ、多分」
無表情につぶやくその様子はお世辞のようにも見えなかったが、
さりとて博子の前でスカートを穿くのに抵抗が無いわけも無い。
僕は硬直したまま、どうしたものかと思案する。
業を煮やしたのか博子は表情も変えずに小さなため息をつくと、
僕のベルトに手をかけて弛めると、そのままズボンを下ろす。
僕は抵抗するでもなく、博子の為すがままにされる。
博子は淡々とシャツを脱がせて僕の上半身を裸にすると、
さらには泥水に塗れたパンツにも手をかけて、
Trompe-loeil.jpg
博子はさほど運動する習慣がないのか、ペダルを漕ぐ足が重く感じられる。
しかし当の博子は軽やかに駆け、むしろ自転車で付いて行く
僕を気遣っているように、時折ペースを落としたりする。
30分ほどして、僕たちは博子の家に着く。
僕は博子を玄関先に繋ぐと、本来の主人を差し置いて博子の部屋に入る。
博子の鞄をぞんざいにベッドの上へと放り投げると、
僕はまずクローゼットを開き、
机の引出しを開き、
ベッドの下にある収納スペースを開き、
五つの人の皮と、三つの獣の皮と、
一つのなんだか分からない皮を見つける。
このことについて少し考えを巡らせてみたが、どうもうまく考えがまとまらない。
仕方がないので博子を散歩に連れて行くために、
僕はジーンズとTシャツのラフな格好に着替えた。

(おしまい)



 先日、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されている「奇想の王国 だまし絵展」を観覧してきました。
 絵の中の人物が額縁から飛び出したり、まるで本物であるかのようなリアルな筆致で描かれたりしている古典的なトロンプ・ルイユ(だまし絵)から、見方によって複数の解釈が可能となるダブルミーニング。日本からは掛け軸の装丁を飛び出した幽霊や植物、歌川国芳の複数の人物が寄り集まって巨大な肖像画を為す作品や、影絵遊びのネタ絵など。さらにはマグリットやダリといったシュールレアリスムの作品や、現実ではありえない多視点の風景が同居するエッシャーの版画から、現代美術の実験的な作品まで、古今東西の様々なだまし絵が終結した、なかなか面白い展示でした。

 で、このブログでもだまし絵的なネタを何かやりたいなぁと思ったのですが、web上でやろうとすると案外難しいんですね。
 基本的に作品は、皆さんが使用しているディスプレイの枠内に収まって、ブラウザの枠内に収まって、ブログのテンプレートの枠内に収まるところまでを前提とすると、表現上の制約が大きくなります。コンピュータなら写真も扱えますし、フォトレタッチなどで本物と見紛うような偽画像を用意することはできるでしょうけど、せっかくのその画像も、既定の枠内にある限り本物と勘違いしてしまう人はいないでしょう。JavaScriptなんかを使えば、ブラウザクラッシャー的なイタズラを仕込めるかもしれませんが、そこまで行くとだまし絵とはまた異なるものになりそうですしね。
 そんなわけで色々と考えた結果、今回のようなネタになりました。でもこれ、環境によってはうまく表示されない可能性がありますね。特に携帯からだと厳しそうです。やっぱり、あくまでも一枚の絵だけで完結しているようなネタが望ましいんでしょうね。結局はアイディア次第ということになりますね。






ラベル:女装 TS 不条理 動物
posted by 三月うなぎ at 23:24| Comment(5) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは新しい!
感服しました。

あと、4周年おめでとうございます。
Posted by あらきん at 2009年07月26日 00:20
隠された皮ものの描写がすっごく気になります。

一言
「レディ、失礼だがそこをどいてはくれまいか?」
Posted by らば at 2009年07月26日 07:35
思わずカーソルでクリックを・・・しても駄目ですね^^;
面白い!!
さすが、三月うなぎさん。
Posted by よしおか at 2009年07月26日 19:45
皆様、コメントありがとうございます。

>あらきんさん
>あと、4周年おめでとうございます。

ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。


>らばさん
>隠された皮ものの描写がすっごく気になります。

それは後でアップします。
イラストよりも、むしろ文章の方が時間がかかっていたりして。


>よしおかさん
>思わずカーソルでクリックを・・・しても駄目ですね^^;

凝ろうと思ったらもっと凝れるとは思うんですけど、仕掛け自体はなるべくシンプルにした方がスマートかなぁとも思います。
Posted by 三月うなぎ at 2009年07月26日 22:12
この騙し絵的発想素晴らしいですね。
TSに関心を持ってページを開いたのですが
発想に関心いたしました。
内容は今からです(笑
Posted by エコ at 2009年07月28日 19:46
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