2006年08月18日

しし座娘

 絶体絶命とは、こういうことを言うのだろう。
 私・くノ一の梢は秘伝の忍術を記した巻物を奪うという使命を帯び、敵の館へと侵入していた。しかし首尾よくその巻物をから盗み出したまでは良かったのだが、敵の追跡を撒ききることが出来ずに、今こうして周囲をぐるりと取り囲まれてしまったというわけだ。

 私は岩場の上から周囲を見回す。敵の数はざっと4、50人といったところか。私を取り囲むその輪は、徐々にその大きさを縮め、私に迫ってくる。
 私の脳はめまぐるしく回転する。この状況を切り抜けるには、はたしてどうすれば良いのだろうか。
 しかし何度考えても導かれる答えは一つしかない。
 逃げ切ることなど不可能だ。
 その答えに三度たどり着いたところで、私は覚悟を決めた。

 キン、キン。
 向こうから牽制のために投げ込まれる手裏剣を小刀で叩き落す。
 風前の灯となった私の命。この巻物を奪うという任務を果たすことも叶わなくなる。
 こうなったらいちかばちかだ。何が書かれているのかはわからないが、この巻物に記された秘伝の術とやらにかけるしかない。

 私は懐から巻物を取り出す。気のせいか、周囲のヤツらに同様が走ったように感じた。それほど大した代物なのだろうか。
 その巻物を広げ、ざっと目を通す。
 私の行動にあせったのか、ヤツらはいっせいに行動を起こした。私にも躊躇している時間はない。
 私はその巻物に書かれていた呪文を、大声で唱えた。

「風よ! 光よ! 忍法獅子変化」



leo.jpg


 巻物に記された力。それは獅子に変化する力だった。
 獅子の力はあまりにも強大だった。私は普段とは比べ物にならないくらいの膂力と、研ぎ澄まされた感覚、それに反射神経を手に入れ、私を追ってきた全ての忍を斬り倒すことが出来た。
 散乱する亡骸を見つめながら、改めて自らの力の恐ろしさを思い知った。確かにこれだけの力があるのならばそれは秘術とされ、互いに相手に持たせておいたままにするわけにはいかないだろう。

 しかし、その力は今や我が方にあるのだ。私は意気揚揚と里へと帰還した。



「誰だ、貴様」
「梢ですよ! 秘伝の巻物を入手し、ただいま帰還いたしました」
「怪しい奴。黙って立ち去れ。さもなくばただでは済まさんぞ」

 困ったことになった。獅子の力を手に入れたは良いものの、私は元の人の姿に戻ることが出来なくなってしまっていたのだ。しかも悪いことに、例の巻物は一度術を発動させたためか、そこに書かれていた全ての文字が消え失せていた。元の姿に戻るための手がかりが失われたことに加えて、もう新たに獅子の力を使うことも出来ないのだ。
 姿が変わってしまった上に巻物も無いのでは、私は里に戻ることも出来はしない。
 憧れの先輩・陽炎丸さんから門前払いを喰らってしまい、私は一人とぼとぼと山道を途方にくれながら歩いていた。

 しかし私はあきらめない。獅子に変化する術があるのだから、きっとどこかには人に戻るための術もあるに違いない。
 こうして、私の人間に戻るための孤独な旅が始まったのだ。

 早く人間になりたーい!


(おしまい)



ラベル:動物 変身 特撮
posted by 三月うなぎ at 01:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 星座 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 演じた役者は今や悪役メイン、なぜか突然のリメイクは現代を舞台のホストバトル…と言う不思議な因縁の作品ですね。

 それはともかく、まさに禁断の術を使った反動がもたらす悲劇の一言で。
 あまたあるこの手の物語の新たなる一ページを記す事となった彼女の運命は…どうなるのでしょうね。
Posted by カギヤッコ at 2006年08月18日 07:01
 恥ずかしながら実はネタ元を観たことはないのですが、主題歌は特撮ソング史上屈指の名曲だと思います。
それはともかく、彼女の今後はまあ、虎化した人といろいろやりあったりするんでしょうかね。
Posted by 三月うなぎ at 2006年08月19日 01:03
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