「はい。私もなんとなく、走るコツをつかんだような気がするんです」

(おしまい)
ウルトラQ第19話「2020年の挑戦」、ウルトラマン第33話「禁じられた言葉」より、ケムール娘。昨日のネタが非常に中途半端だったのが悔しくて、きちんと資料にあたって描いてみました。
とにかくケムール走りを描きたかったので漫画的な表現になってしまったのですが、もっと怪奇色を出せば良かったかなぁ。あと、古谷敏的スレンダーさも足りないかも……。それはそれとして、もう少しかわいくすることもできた気もしますし、なかなか難しいものです(あ、この際全部やっちゃえばいいのか)。
「2020年の挑戦」は、肉体的な衰えを解決するために地球人の若い肉体を利用しようとする誘拐怪人ケムール人の引き起こす誘拐事件を追うミステリ。次々と人々が消失していくというスリル、密かに忍び寄るケムール人の不気味さ、幻想的ともいる遊園地の描写、宇田川刑事のとぼけたような味わい、そしてあのオチまで見所満載で、ウルトラQでも屈指の好エピソードだと思います。
一方「禁じられた言葉」のケムール人は、メフィラス星人の示威行為のためにぽんと出てきて、何もしないうちにあっさりと退場してしまいます。もっと言えば、日中の明るいところでの出現だったり、カラーだったりしたために、ウルトラQ登場時と比較してミステリアスさも減じられていました。ストーリー的な役割は大したことは無く、「ウルトラQ」と「ウルトラマン」の世界には何らかの関連があるということを示唆する程度に留まっています(雌雄の違いや、身体のサイズが大分違ったりしていますが、先に海底原人ラゴンが両作品に登場しています)。
ウルトラQの中の幾つかのストーリーは、巨大怪獣のもたらす直截的な破壊の恐怖とは異なり、より日常的に遭遇してしまうかもしれない、そして誰にも気づかれないまま自分だけが被害者になってしまうかもしれないという恐怖を孕んでいます。
「2020年の挑戦」は、個人に忍び寄る怪奇的な要素と、世界を揺るがす怪獣的な要素の両方を併せ持っています。しかしケムール人は、人知れず背後から忍び寄る不気味な液体や、特異なシルエットに奇妙な手の動き、深夜の道路を疾走する様など、まさに“怪人”と呼ぶに相応しい存在です。ケムール人の持つその怪しい雰囲気を活かすためには、巨大化して観覧車を壊すという怪獣番組的な要素や、もっと言えばXチャンネル光波というSF的ガジェットさえ蛇足だったかもしれません。
私の個人的な失策は、「2020年の挑戦」を映像で観る前に、藤原カムイの漫画版で読んでしまったことですね。漫画版は一部アレンジしているところはあるものの、原作の雰囲気をかなり忠実に再現していてとても良い出来なのですが、やはりまずはオリジナルを視聴するのが幸せな楽しみ方だったと思います。
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でもね、万条目がケムール人に変身するシーン。
薄暗くなってきた午後の七時に白黒の今よりも薄暗い電球の下で見て御覧なさいよ。夜一人でトイレに行けないから。
わたしゃ、小学生だったんだよ。こわいんだよ、もう・・・
「クモ男爵」なんか見た日にゃ、クモがうろつく便所には怖くていけなくなるんだから・・・ほんとだよ。
再放送での視聴ですけれど、円谷系で怖かったのは、ウルトラマンエース第19話「河童屋敷の謎」で、プールで泳いだ子供がヘソを取られるというところですね。放送されたときがプールシーズンではなかったので助かりましたが、もし夏に観ていたらプールに入れなくなっていたかも……。