三田村がバーの扉を開けたときには、時刻は既に午後11時に差しかかろうとしていた。平日の夜ということもあり店内は閑散としており、客は僅かに一人だけのようだ。
「おう、三田村! こっち、こっち」
店の奥のテーブルでその唯一の客――グレーのセーターを着た女性が三田村に手を振る。三田村のサークルの先輩、水沼レナだ。既に多量の酒を飲んでいるのだろう。レナの顔は相当真っ赤になっている。グラスを握る手も危なっかしい。
三田村はコートを脱ぎながら、レナの向かいの椅子に腰掛けた。
「どうしたんですか? こんな時間に呼び出して」
一時間ほど前に送信されたレナからの出頭命令メールを受け取って、三田村は取るものもとりあえず駆けつけたのだ。
とりあえず飲めとレナは自分のグラスを差し出すが、三田村はそれを断ってライムサワーをオーダーした。その態度を見て、レナはつまらなそうにグラスに口を付けた。そして三田村を睨みつけてこう訊ねた。
「ねえ、今日ってなんの日か、知ってる?」
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posted by 三月うなぎ at 00:20|
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