『悪い。30分遅れる』
ヒトミからのメールを確認し、携帯をパチリと閉じる。ヒトミの遅刻癖はいつものことだから、別段気にするようなことでもない。世の中には時間にルーズな人間も確かに存在していて、どうやら本人にもどうすることもできない類のものらしいのだ。それは友人との飲み会だろうが、俺とのデートだろうが、一切関係ない。しかし、待ち合わせの1分前にしっかりと遅刻メールを送ることだけは忘れないのだから、もう少しなんとかならないものかと思わずにはいられないのだが。
時間を潰すために、しばらく近くをぶらつくことにした。普段あまり行かないようなところを散策しようかとも思ったのだが、駅ビルの中は女性服売り場ばかりなので、男一人ではどうにも居心地が良くない。仕方がないので本屋にでも行こうかと思ったところで、ある一着の衣服が目に入り、つい足を止めてしまった。
それは確か、漫画か何かのキャラクターのコスチュームだったと思う。そうだ、彼女の家で小説だのアニメだのと色々と説明を受けたヤツだ。そう、ナントカ姫物語。何姫だったっけ? 変な名前だったんだよな。正直なところ、内容はほとんど頭には残っていない。
よく見るとその店には、赤だの黄色だのピンクだの、カラフルな色のコスチュームが所狭しと陳列されていた。色使いだけでなく、リボンやフリルなどのデザイン面も派手なものが多い。セーラー服などもあるが、実際にこれを採用する学校があるとはとても思えない。いわゆるコスプレの専門店のようだが、さして大きくもない地方都市にもこんな店があるのかと、少し感心した。
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posted by 三月うなぎ at 02:47|
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女装
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